※この記事では『風の谷のナウシカ』の原作漫画のネタバレ感想を含みます。
前回に続いて漫画版『風の谷のナウシカ』について書いていこうと思います。
前回の記事は『ナウシカ原作漫画のラストネタバレ!巨神兵の正体と火の7日間!』です。
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連続して書いております『ナウシカ』についての記事ですが、基本的にラスト近くで明かされる秘密について書いていっています。
漫画の7巻に当たる部分です。
この『ナウシカ』7巻は内容的に凄まじく、驚異的だと僕は感じています。
何かで読んだ記憶があるのですが、エヴァンゲリオンの庵野監督が「ナウシカ7巻は宮崎監督がブレーキをかけていない。だから好きだ」と言っていたそうです。
僕も庵野さんの言うとおりだと思っています。
ブレーキが全然かかっていないのです。
そしていい意味で制御できていない感じが最高なのです。
ある種の狂気と言っても良いでしょう。
この狂気・狂っている『ナウシカ7巻』に『エヴァンゲリオン』は影響を受けていると僕は思っています。
というかそのように言われていますね。
特に『劇場版エヴァンゲリオン・まごころを君に』はもう完璧に『ナウシカ7巻』ですね。(あくまでも僕の中ではですが。)
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さて、そんな感じで『ナウシカ7巻』は衝撃的なのですが、それをあえてネタバレして記事を書き続けているのはなぜかと言いますと、やはり多くの人に1度は漫画版ナウシカを読んでいただきたいとい思いからです。
映画版とはやはりスケールが全く違うと思いますし、映画版は映画版で完成されている作品ではありますが、映画版だけで「ナウシカ素晴らしい!」というのもちょっともったいないと僕は思えるのです。
ということで、ネタバレしても漫画版に興味を持っていただきたいという思いです。
また、漫画版ナウシカは絵が細かすぎて読みにくいという欠点(僕はこれをあえて欠点としています)があります。
絵が細かい上に話がややこしくてストーリーが入ってきにくいと思われます。
1度読んだだけでは、ストーリーの意味がよく分からないで終わってしまう可能性もあります。
昔の僕自身がそうでした。
ただ、意味がわからないなりにも、「なんかすごく魅力的だぞ!」と思い何回も読み直している内にストーリーが入ってきました。
ですから、あえてネタバレして興味を持っていただいたほうが漫画版を読む際にスムーズに話が入ってくると僕は思い、ネタバレを公開しています。
漫画版ナウシカは、ネタバレをしたところで価値が下がることはないと僕は思っています。
さて、ついつい前置きが長くなってしまいました。
前回の記事では、火の7日間や巨神兵、そして世界再建の計画について書いてきました。
世界再建の計画とは、おおむね次のようなものでしたね。
科学技術が非常に発達した旧世界は、度重なる紛争で世界を汚染しまくっており絶望的な状態で、そうした世界を一度リセットしやり直そうと旧人類は考え、計画したのが世界再建の計画です。
調停者にして裁定者である人工の神・巨神兵により世界は一旦破壊されます。
これが火の7日間で、その後、腐海の浄化システムによって世界の大気は徐々に浄化されていきます。
浄化された暁には腐海は消滅し、新人類が卵から生まれ世界中に反映します。
新人類は争いごとを好まず、音楽と詩を愛する穏やかな人種になるようにされています。
では火の7日間後の世界で、まだ腐海が存在している状態で生きているナウシカ達はいったい何者なのかという疑問が湧いてきます。
実はナウシカ達にはとんでもない秘密があったのです。
前置きで長くなりましたが、今回はナウシカ達の秘密について書いていこうと思います。
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目次
ナウシカ達は人造人間
さて、いきなりですがナウシカ達は実は普通の人間ではありません。
旧世界の科学技術によって人工的に改良を加えられた人種だったのです。
すなわち人造人間という事です。
ナウシカ達の生きる世界には腐海が存在しています。
腐海は大気を浄化するシステムです。
それについては『ナウシカ原作漫画のラストで明かされる腐海や王蟲の衝撃の存在理由!』で書いています。
ですから腐海が存在しているということは、まだ大気は汚染されているという事です。
ナウシカ達の住んでいる風の谷も汚い空気なのです。
そんな中、普通に生活できている理由はナウシカ達が汚染された空気の中でも生きていけるように改造された人種だったからです。
そもそも猛毒の瘴気が充満している腐海の中に、軽度なマスク1枚で平気だというのもおかしい話です。
作中では詳しくは書かれていませんが、恐らく旧人類が火の7日間後にも生きられるように自らを人造人間として改造したのでしょう。
汚染された空気の中でも生きていけるように手を施したのです。
ナウシカ達はその改造人造人間の子孫だということでしょう。
極度に汚染された場所、例えば腐海の中のように瘴気で充満したところ以外であれば、マスク無しでも生きていけるのはそのためです。
さて、ナウシカ達が人造人間だというだけでも驚きですが、秘密はそれだけではありません。
完全に浄化された空気ではナウシカ達は生きていけない?!
実は、ナウシカ達は完全に浄化された空気では生きていけないという事が明かされます。
きれいな空気に晒された瞬間、ナウシカ達は血を吐いて命尽きるようにプログラミングされているのです。
つまり、ナウシカ達は毒なしでは生きられないのです。
汚染されているから、汚い空気だから生きていけるということなのです。
ちょっと待って・・。
ここで少し疑問が出てきます。
ナウシカ達は汚染された空気の中でしか生きられないということは、じゃあなぜ腐海の中に入るのにマスクが必要なのでしょうか?
毒なしでは生きられないのでしたら、腐海の毒はむしろ歓迎すべきではないでしょうか?
それとも腐海は実は浄化された空気なのでしょうか?
その事については、以下の記事で書きました。
⇓ ⇓ ⇓
風の谷のナウシカの腐海の瘴気は浄化された空気なのか?
汚い空気でないと生きられないナウシカ達・・・。
なんという皮肉なことなのでしょう・・・・。
人々は世界が浄化されることを夢見ています。
いつか、綺麗な世の中になると。
ですが、綺麗な世界・浄化された世界になった途端に、ナウシカ達人造人間は血を吐いてあの世行きという事です。
つまり全滅です。
なぜそのようにプログラムされているのでしょう。
答えは簡単です。
浄化後に卵から生まれてくる新人類と完全に入れ替わるためです。
争いを好まない新人類たちにとってナウシカ達人造人間は不要な存在です。
ですから浄化とともに、人造人間は滅びる運命にあるのです。
少し脇道にそれます。
今書いていて思ったのは、始めから滅びるようにプログラミングされているというこの展開、漫画『スパイラル 〜推理の絆〜』とも似ているなと思いました。
この漫画も、最後の最後でそれぞれのキャラクターの存在理由などが明かされ、自分たちの命が尽きることを知る展開なのです。
面白い漫画なのでオススメします。
電子書籍もございます。
⇓ ⇓ ⇓
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全ては人工的に作られたもの
さて、ここまでを振り返ってみると、ナウシカ達の世界は大半が人工的に作られたもの・或いは人工的にとを加えられた存在であることが分かります。
ナウシカ達の暮らしを脅かす腐海や蟲は旧人類により人工的に作り出されたものです。
腐海は汚染された大気を浄化させるために作られたものでした。
腐海の菌類や植物たちは皆そのために旧人類の手によって製造されたのです
そして、その浄化システムである腐海を守る役割として作られたのが王蟲を始めとする蟲たちです。
出典元:楽天市場「風の谷のナウシカ・プルバックコレクション・王蟲 穏やかな碧:エンスカイ」
王蟲はナウシカや森の人にとって偉大な存在です。
『個にして全、全にして個』、それが王蟲です。
腐海や蟲はナウシカや森の人にとっては聖なる存在です。
それが旧人類によって作られたということは受け入れがたいことであります。
そして、腐海や王蟲などに囲まれて暮らすナウシカ達も、また人工的な手を加えられた存在なのです。
ナウシカ達はもはや自分たちの意思とは関係なく、旧人類の計画の一環として存在しているに過ぎないというわけです。
ナウシカはこの事実を『庭』で知ることになります。
『庭』とは火の7日間以前に存在した動植物や文化を保存している不思議な場所です。(具体的に知りたい方は是非漫画をご覧になって下さいませ。)
『庭』の主との対話により、ナウシカはこの世界の秘密を知るのです。
さて、全ての秘密を知ったナウシカがとった行動は非常に過激的なものでした。
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ブチ切れたナウシカは巨神兵で人類を滅ぼす?!
さて、『庭』で事実を知ったナウシカがとった行動はどんなものだったのか?
結論から先に書きましょう。
ナウシカは巨神兵を使って、新人類の卵を破壊します。
つまり新人類を滅ぼしてしまうということです。
かなり衝撃的な行動です。
なぜナウシカは新人類を滅ぼしたのでしょう。
詳しくは書ききれないのでごく簡単にまとめます。
非常に簡単にいうと、ナウシカは旧人類の世界再建の計画に対してブチ切れたということなのです。
「ふざけんなああああ!!!!!!!」という感じにです。
ナウシカにとって旧人類の計画は生命を弄んでいると感じたのでしょう。
腐海や王蟲達が人工的に作られた物であり、さらに自分たちの命が新人類へと取り替えるための単なる駒のような扱いに激怒するのです。
ナウシカにとって人間や生命は苦しみ、悲劇、汚濁などが入り交ざったものであるという考えを持っています。
そうした汚い部分も含め人間とは尊いものなもだという事です。
だからこそ、喜びや輝きも同時に存在するという事です。
ナウシカにとって、汚れの一切ない綺麗なだけの人間たちが反映する世界など愚劣で不愉快極まりない世界なのです。
そんなものは偽りでしかないという事なのです。
自分たちの命、腐海や王蟲の存在が、そんな下らない世界のための道具の一部ということが許すまじなのです。
このようにナウシカは生命に対し、強烈な思想を持っているのです。
ナウシカはシュワの墓所の主に対し思いの丈をぶつけます。
お前は滅ぼす予定の者達を あくまであざむくつもりか!!
お前が知と技をいくらかかえていても 世界をとりかえる朝には 結局ドレイの手がいるからか
私達の身体が人工で作り変えられていても 私達の生命は私達のものだ 生命は生命の力で生きている
その朝が来るなら 私達はその朝にむって生きよう
私達は血を吐きつつ くり返し くり返し その朝をこえて飛ぶ鳥だ!!
出典元:宮崎駿、「風の谷のナウシカ 7巻」、徳間書店、198ページ
これに対し、墓の主は次のように答えます。
娘よ、お前は再生への努力を放棄して 人類を亡びるにまかせようというのか?
(中略)
人類はわたしなしには亡びる
出典元:宮崎駿、「風の谷のナウシカ 7巻」、徳間書店、201ページ
墓の主は、ナウシカに対し人類を滅ぼしてもよいのか?、と問うてるのです。
墓の主はナウシカに次のように言いました。
これは旧世界のための墓標であり 同時に新しい世界への希望なのだ
清浄な世界が回復した時 汚染に適応した人間を元にもどす技術もここにしるされてある
交代はゆるやかに行われるはずだ
永い浄化の時はすぎ去り 人類はおだやかな種族として新たな世界の一部となるだろう
出典元:宮崎駿、「風の谷のナウシカ 7巻」、徳間書店、199ページ
つまり、亡びるとされていたナウシカ達人造人間も、実は清浄な空気のもと生きていける道もあると言っているのです。
世界が浄化された暁に、ナウシカ達は血を吐いてあの世行きへの運命ですが、それを回避する事も可能だと
しかしナウシカはそれを拒絶するのです。
ナウシカ達人造人間も生き延びられるかもしれないのにです。
ナウシカにとって、命を弄ることは許すまじなのです。
だから墓の主はナウシカに対して、「お前は人類を滅ぼすつもりか?」、と問うたのです。
しかしナウシカにとって旧人類の計画は我慢ならないものです。
ナウシカはシュワの墓所を破壊しようとします。
墓の主はナウシカに破壊を思いとどまるように言いました。
お前は悪魔として記憶されることになるぞ
希望の光を破壊した張本人として!!
出典元:宮崎駿、「風の谷のナウシカ 7巻」、徳間書店、208ページ
しかし、ナウシカには墓の主の言葉など全く届きません。
ナウシカは次のように言い放ちます。
かまわぬ
そなたが光なら 光など要らぬ
出典元:宮崎駿、「風の谷のナウシカ 7巻」、徳間書店、208ページ
これ、なかなかすごいセリフですよね。
『光なんていらない!!』ですから、、。
つまり「人類なんて滅んで良いんだ!」、と言っているようなものですよ。
その直後、ナウシカは巨神兵(オーマ)に命令し、シュワの墓所を破壊します。
出典元:楽天市場「figma 巨神兵東京に現わる 巨神兵 全高約16cm ABS&PVC製 」
墓を破壊光線(?)でぶち壊し、墓の主を握りつぶさせます。
新人類の卵も全滅するわけです。
映画版『風の谷のナウシカ』では巨神兵を使ったのはクシャナでした。
ですが漫画版『風の谷のナウシカ』では巨神兵を使うのはナウシカです。
映画版と漫画版のこの違いが興味深いところであると思います。
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ナウシカをかばったトルメキア王
ナウシカがシュワの墓所で主と対話する際、トルメキア王もいました。
トルメキア王はつまりクシャナの父君です。
暴君と言われるトルメキア王。
ところが、墓所の破壊の際に、墓の主が弾ける時に発する光線からナウシカをかばいました。
それが原因で命付きます。
なぜ暴君のトルメキア王がこのような行動を取ったのかは謎ですが、しかしその際にナウシカへ向けたセリフが僕はかなり印象に残っています
気に入ったぞ
お前は破壊と慈悲の混沌だ
出典元:宮崎駿、「風の谷のナウシカ 7巻」、徳間書店、212ページ
『破壊と慈悲の混沌』。
まさにナウシカを象徴的に言い表した言葉です。
そうなのです。
ナウシカとはつまり混沌・カオスなのです。
グチャグチャなのです。
制御できていないのです。
これこそがナウシカの人間性であり魅力であると僕は思います。
そのカオスっぷりは、『ナウシカ7巻』から影響を受けたであろう庵野秀明監督作の『エヴァンゲリオン・まごころを君に』の碇シンジくんとも近いものを感じています。
ラストでナウシカは失恋確定!?
さて、ブチ切れて墓所を破壊したナウシカ。
崩れ行く墓所、命尽きる巨神兵・オーマを前にナウシカは喪失感にあふれています。
『例え自分たちの存在が人工物であろうとも、それでも鳥のように生きていくんだ!』という意志の元、新人類と墓所を破壊したナウシカ。
しかし、喪失感でいっぱいのナウシカの様子は、どうミてももう生きる希望を失っているように見えます。
動けなくなっていたナウシカは、アスベルに救出されます。
アスベルに救出されていなかったらナウシカは間違いなく墓所の下敷きになっていたことでしょう。
ナウシカはアスベルの声でなんとか目覚め、そして生きていく事に希望を感じたのかもしれません。
アスベルに対する淡い期待というやつです。
しかし、その期待もあっさりと消え去ります。
ラストのページで、アスベルはケチャと抱き合うシーンがあり、ナウシカはそれを寂しそうに眺めているからです。
そのナウシカの表情はもはや諦めも混じっています。
ナウシカ失恋確定ということです。
より詳しくは以下の記事を御覧ください。
⇓ ⇓ ⇓
『ナウシカの失恋!アスベルはケチャと結ばれる?!原作漫画版の結末』
ナウシカにとってこの先『生きる』という事は幸せなのかどうか?
難しい問題です。
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まとめ
さて、数回に渡って原作漫画版の『風の谷のナウシカ』のラストで明かされる秘密について書いてきました。
漫画版ナウシカのラストは、ナウシカが人類滅亡の道を選んでしまったというところで終わるわけです。
新人類を巨神兵を使い絶滅させ、浄化後の世界でも生きていける術を手放してしまったのです。
なんというか、全く救いのない終わり方です。
しかもナウシカは失恋までしてしまうわけですから・・・・。
しかし、この救いのない感じが良いのです。
最初の方でも少し触れましたが、漫画版『ナウシカ』のラストは『エヴァンゲリオン・まごころを君に』を彷彿とさせます。
『ナウシカ』でも世界再建計画は『エヴァ』で言うところの人類補完計画に非常に似ています。
また、僕は『ナウシカ』の救いようのないラストに対して、永井豪さん作『デビルマン』のラストを連想してしまいます。
『デビルマン』はかなり昔の漫画ですが、なかなかとんでもないストーリーだと僕は思っています。
『デビルマン』については、また別の機会にでも書いていこうと思いますが、ここでは漫画をオススメするにとどめます。
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さて、話があちこち脱線してしまいましたが、今回はナウシカ達の正体とラストシーンでのナウシカの行動について書いてきました。
また機会がありましたら、原作漫画版の『ナウシカ』について書いていこうと思います。
『風の谷のナウシカ』の他の記事は以下から御覧ください。
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『スタジオジブリ宮崎駿作品『風の谷のナウシカ』まとめ
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